バッファロー’66
刑務所から出所したある男は、結婚もしていないのに「妻を連れて帰る」と親に嘘をついたため、通りすがりの女性を誘拐し、「親の前でおれの妻を演じろ」と強要するはめに・・・。
出会ったばかりのある男と、ある女のある1日の話。この先は書きたい放題なので、この作品を未見の方は立ち入り厳禁です。
                                                 鈴木
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あまりに正直で、飾り気の無い映画である。ヴィンセント・ギャロ演じるビリー・ブラウンを見ながらまず思った。いや、そもそもギャロがビリーを演じているだなんてとても思えない(思いたくない)。ビリーは何かを話すとき、同じ言葉を繰り返してじっくり相手を説くようにしてしゃべる。おそらく、不器用な自分の内面を懸命に伝えようとする意気から来ているのだと思う。ビリー・ブラウンというキャラクターの魅力は、その飾り気の無い自然さにある。何かを繰り返してしゃべるという細かい癖まで、キャラの設定に組み込んでいるとは思えない。ビリーはギャロの地であるとしか考えられない。
そして、ところどころに違和感を覚える映画である。なぜなら、まずビリーが徹底的にか弱いからだ。男にあるまじき弱さだ、と観客はまず違和感を持つ。そして映画が進むにつれ、観客はその違和感がほぐれていき、新たな違和感が生まれてくるのに気付く。なぜ自分は、この弱い男に違和感を持ったのか?こういう男はいて当たり前ではないのか?と。
こうした違和感も、やはりこの映画の正直さに起因していると思う。ギャロは、ビリーを嘘偽りなくとことん弱い男として形成したのだ。それは、従来の「強く、たくましい」男像への反逆である。しかし、ビリーを見ていると、これが男の姿なのだ、と同じ男として共感せずにはいられない。見栄っ張りで、わがままで、女に支えてもらわないと生きられない本当の男の姿。男にできるのは、せいぜいかっこつけて、女にひたすら優しくしてあげる(ベッドカバーは汚れているから、座るなよというとか)ことぐらい。この映画を知るにつれ、ビリーこそ本当の男だとまで思ってしまう。とはいえ男はビリーのように弱くあってはならない。しかし、本当はこうあるべきなのかもしれない。
そして、あまりにうまくまとまりすぎなラストシーン。冒頭の寒々しい刑務所のカットからすると信じられない展開である。まさにギャロが仕掛けた最大の違和感。ここまで正直さを貫いた映画なのに、ここに来てあまりにしたたかな展開である。
しかしよく考えると、このラストシーンは、レイラあってのものである。レイラの存在が、ビリーを破滅の寸前から立ち上がらせたのだ。言うなれば、レイラがくれたハッピー・エンド。レイラは、ビリーの優しさ、正直さに好意を持った。だが、ややもすると、ビリーはその正直さゆえに彼自身を犠牲にしかねない。レイラはそれを知っていたのだ。嘘臭いまでにまとまったラストシーンは、今まで正直すぎて人生を損してきたビリーに対するレイラからの贈り物であると思った。だからこそ、なんだか無理のあるように見えるラストシーンにも、とってつけた感じがしないのである。
違和感、という言葉を並べてはきたが、それらはこの映画の誠実さから来ているものだとわかるだろう。それはあまりに心地よい違和感。今までに味わったことのない不思議な感覚。自分の周りにも、違和感があるからといって敬遠してしまっている人や映画があるのではないだろうか。そういう人たちに限って、ちょっと近づいてみれば、ラージのココアを持ってきてもてなしてくれるような優しい人なのである。
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by chuoeiken | 2004-11-27 22:05 | ラブストーリー
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