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タクシードライバー
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 トラビスはなぜ眠れなかったのか?
彼がタクシーの運転手という仕事を選んだ理由に「不眠」が一つあるのだ。
神経質と言えるまでに「正しいこと」に固執した彼は「ゴミ溜め」のような街の中で中性的な位置にいた。それがタクシードライバー、そう思える。
 スーツでもなく、完全武装でもなく、小汚いジャンパーを着ているときだけ彼は街を傍観できる。しかし彼は時にタクシードライバーをやめて上品な人間を振舞う。それが終われば今度は銃を何丁も装備したテロリストになってみる。その振り子のような変貌ぶりを観ていると胸がギスギスと痛んでくる。切なくなってくる。
 その不安定さは彼だけではなく、私たち誰もが持っているものではないだろうか。誰も知ってくれない、共有できない不安。いや、不安であるからこそ共有を恐れるのかもしれない。トラビスの不眠症はフィクションではないはずだ。

 振り子がもっとも速くなるのはその中間点である。タクシードライバーに戻った彼はさらに眼光を鋭くして夜の街に消えていく・・・。
 個人的にケルアック、バロウズなどのビート・ジェネレーションの香りもほのかに感じてしまったこの映画、主演はもちろんロバート・デ・ニーロ。非常にかっこ良い。(オ)
by chuoeiken | 2006-04-01 00:58 | 社会派ドラマ
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映画のReview
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