カテゴリ:ヒューマンドラマ( 16 )
昼顔
不感症に苛まれ、夫との行為に及べない美女・セヴリーヌは、その肌の下には滾る肉欲を潜めている。貞淑という表情に化粧をのせながら、夫と違うベッドで眠る度、男たちに乱暴にいたぶられるのを夢想する彼女は娼館を訪れる……。

婉曲的な官能表現に彩られ、潔く且つやわらかい場面転換で紡がれるこの作品には、悪意にも似た魅力が満ちている。
というのは、作中でセヴリーヌが見る夢――もうコメディの域かというほど物語の筋から乖離したシチュエーションやボキャブラリーで彼女が嗜虐されるのだが、カメラが夢へとシフトする方法が、通常の場面転換と全く変わらないのだ。「アレ、これは夢だよね?」と確信する頃には現実へとカメラが向いている。そのトリックは序盤からエンド・シーンにまで貫かれる。この手法が持つ演出力というのは甚大だ。
物語というのは受け取り手に対して親切である必要があるが、過剰な親切は受け取り手の解釈の余地をなくしてしまったり、話の筋を堕落させたりする。現実世界と夢想世界の境界線の不在は、シンプルに観ればもちろん不親切なもの。だが作り手がそれを親切な形にまで昇華して、「親切な不親切」を作り出したとき、受け取り手は自分の個性にあかせた解釈を許される。

人間がセックスに対して抱く憧憬をシチュエーション・コメディに擬態させるかのように描ききった傑作。虚脱するしかない。一年ぐらいしたらもう一回観たい。それを一生続けたい、という映画。b0040244_14492740.jpg
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by chuoeiken | 2008-01-31 14:49 | ヒューマンドラマ
undo
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まあぼくが岩井俊二好きというのは、内輪では結構有名な話である。「リリイ・シュシュのすべて」だとか「スワロウテイル」も好きだが、あの人の徹底した美的(なだけの)映像の追求というのは、ストーリーを固めた作品よりも短編、特に「あまり出来事が起こらない話」でこそ活きるところがあるように見える。その点で「PiCniC」もすごく好きであり、あちらの方が完成度が高いとは思うが、ここで「undo」を挙げるのは単に山口智子が好きというだけの理由。

ネタバレ少し 山口智子いっぱい
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by chuoeiken | 2006-11-07 10:24 | ヒューマンドラマ
菊次郎の夏
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「大人はな、子供のために、命かけなきゃな」
コメディー調の流れのなかにそんな台詞がいきなり飛び出してくる。
たけし映画の独特な青い世界に突拍子もなく鮮やかな色が映し出されるように。

この作品に限らず、北野武が映画で描くものってとてもシリアスだ。愛情や孤独を直視していると思います。
それをお笑いで隠しているようにも思えてしまいますけど。そうでもしないと照れくさくってしょうがねぇや!って鼻をすする「ビートたけし」が目に浮かんでしまうのは、僕だけでしょうか。

この作品はロードムービーなんですね。ヒッチハイクで子供のお母さんを探しにいく話。でも後半はグレート義太夫と井出らっきょをいじりまくっていた。そこはな~…う~、いらないよねぇ?いるのかな。
久石譲の「summer」はやはり、美しかったです。もうすぐ夏。誰かどっか行こうよん。(がさがさおがさわら)
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by chuoeiken | 2006-05-11 00:07 | ヒューマンドラマ
かあちゃん
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市川崑監督作品/岸恵子 主演/原作 山本周五郎/脚本 和田夏十・竹山洋
うーん、久しぶりに泣きました。何って?映画で。涙の量で言ったら小学生のときに観た『火垂るの墓』くらい。ってそりゃもう号泣じゃねえか。いえいえ、違うんです。何が?質が。・・・しつこくてすいません・・・。

日本は天保末期、江戸の庶民たちは飢饉により貧しい生活を送っていた。そんな中、身よりもない、金もない青年・勇吉は長屋のある一家が金を溜め込んでいることを聞いて泥棒に入る。(オガサワラ)

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by chuoeiken | 2006-01-23 01:26 | ヒューマンドラマ
アバウト・シュミット(監督アレクサンダー・ペイン、米、02年)
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「生きている」という事は孤独である。普段、多くの人はそのことを感じない。しかし、大切な存在を失ったとき本当の孤独に直面するのである。『アバウト・シュミット』は、その「孤独」と真正面から向かい合った映画である。
 主人公は生命保険会社を定年まで勤めたシュミット氏(ジャック・ニコルソン)である。ある日、最愛の妻を失い平穏に思われた生活の歯車が狂いだす。シュミットとという人間の本質が、「1人」になる事であぶりだされてくるのだ。その描きかたが、あまりにリアルで皮肉たっぷりな為に、笑わないで観ることはほとんど不可能に近い。しかし、シュミット氏をそれだけリアリィティを持って描けるのも、ジャック・ニコルソンという怪優の存在があってこそである。誰にでも思い当たる節のある生活のディティールを、見事に演じきっているのである。その名演によって、シュミットという酷く情けない男に、情けない男だからこそ感情移入してしまうのである。
 誰もが孤独を抱えて生きている事を教えてくれる映画である。しかしこの作品を傑作にしたのは、ほんの少しであっても誰かと気持ちが繋がっている事の喜びが、ひしひしと伝わってくるからである。                                               
                   三橋慶太             


                     
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by chuoeiken | 2005-11-08 13:08 | ヒューマンドラマ
 シンデレラマン(監督ロン・ハワード、米、05年公開)
 
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 ハリウッドの王道を往く傑作である。近年、これ程までに主人公に感情移入できる米映画は皆無である。ロン・ハワード監督作品(『アポロ13』、『身代金』、『ビューティフルマインド』など)の中でも、最高の出来であると言っていいであろう。その最大の要因は、主人公ジム・ブラドッグの人物像にあると言える。
 時代背景が、ブラドッグの人物像を浮き彫りにする。すなわち、1929年に起きた世界大恐慌である。ボクサーであるブラドッグも、休みなく試合をしなくては家族5人が生活出来ない状況に追い込まれるのである。さらに、連戦がたたった怪我をし、観客を喜ばせる試合が出来なくなってしまう。それが原因で、ついにはボクサーの免許まで剥奪されてしまうのである。いわゆる、「リストラ」である。バブル崩壊を経験した日本人であるならば、誰でもブラドッグに感情移入してしまう筈である。
 そんなブラドッグが他の何よりも大切にしているのは、家族である。最近の米映画では、「敵」から家族を守るという映画は腐るほどある。しかし、貧困から家族を守る映画は、少なくとも近年のハリウッド映画では、『シンデレラマン』だけである。この作品が感動的なのは貧困に直面することによって、人間の本質が露わになるからである。すなわち、ブラドッグが家族を想う気持ちが真に伝わってくるのである(ボクシングの試合などから)。
 『シンデレラマン』は監督、脚本、役者と三拍子揃っている。今年度の米アカデミー賞の主要部門の大半を獲得してもおかしくない見事な作品である。
                        三橋 慶太
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by chuoeiken | 2005-10-26 18:31 | ヒューマンドラマ
ミリオンダラー・ベイビー(監督クリント・イーストウッド、 2005年公開)
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 まったく、この男の限界はどこにあるのだろう。殆どの場合、映画監督は年を取るにつれて作品の「迫力」は落ちていく。しかし、クリント・イーストウッドという男は、70歳を過ぎてからピークを迎えているようである。それを『ミリオンダラー・ベイビー』が証明しているのである。
 まず、迫力あるボクシングの試合が目を引く。マーティン・スコセッシの傑作『レイジング・ブル』に並ぶ程、リアリィテイのあるファィティングシーンである。75歳の監督が撮ったとは思えないほどの迫力が、この作品を素晴らしいものにしているのである。すなわち、主人公(ヒラリー・スワンク)の生きている証である『ボクシング』が完璧に描かれているのである。その為、観客は主人公が殴られる「痛み」(リングだけでなく、日常生活においても)を共有し、物語に深く感情移入してしまうのである。
 ボクシングのシーンは素晴らしいが、この物語の本質ではない。この映画は、「人生」の物語なのである。人がどういう決意で生きて、死んでいくのかということについて深く、真剣に見つめた映画なのである。そういう意味では、黒澤明監督の『生きる』の現代版であるといえる。「生きる」ということは、胸に「決意」を秘め、その覚悟の元に懸命にもがくことであると感じた。そのことを、この映画の主人公が教えてくれるのである。
 生きるということを真剣に見つめた映画ほど、迫力のあるものはない。真剣に見つめれば、必然的に人物や物語にリアリティが出てくるからである。近年、アメリカ映画でこれ程までに「生きる」ことについて考えさせられる作品はなかった。この作品は、今までの傑作がそうであったように、30年たっても色褪せないであろう。
                    三橋 慶太

                                         
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by chuoeiken | 2005-10-19 18:43 | ヒューマンドラマ
スクラップヘブン
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「ベルリン、僕らの革命」とかぶるなあと途中で感じたんですが、わたしは、「ベルリン、~」にいまいちヌルさ、物足りなさを感じたのに対し、この作品は、徹底的に絶望、痛み、そして可能性(あえて希望とは言わない)を描いていると感じました。

ラストちょっとだけネタばれ
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by chuoeiken | 2005-10-09 15:38 | ヒューマンドラマ
カッコーの巣の上で
b0040244_1523012.jpg 世の中には洗脳的なものがしばしばあります。ちょっと油断するとすぐに自分の意見を見失い、与えられた情報に飲み込まれてしまいがちです。僕はと言うとたいていの映画を観ると反論もせずオモシレーオモシレーと喜んでしまうおめでたいヤツで、実によろしくありません。そういう話じゃありませんが。
 ではこの映画はどうだったかと言うと、思っていたよりもずいぶん静かな語り口で、僕にはちょっと刺激が足りませんでした。最近の映画などがあまりに刺激的になっているせいかもしれません。悪役?のラチェッド婦長よりも、某教室の女王のほうが洗脳的で怖かったですし。
 逆に言えば、静かに語られる分だけ観客に何かを考える余地が多く与えられていて、「人から何かを考える自由を奪ってはならない」というこの映画のテーマに即していたとは思います。

ネタバレあります
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by chuoeiken | 2005-10-04 02:19 | ヒューマンドラマ
ボーイズ・ドント・クライ
b0040244_23535551.jpg 「あなたが男性だとして、ある朝、目がさめたら、心はそのままで、体だけ女性になったらどう思いますか。
性同一性障害の苦しみとはそういうものです。」

 僕はこの映画を観る前も、観た後も「性同一性障害」という病気のことがよくわからなかったので、こちらのサイトから上の文を抜粋してみました。要するに、この病気を題材にした映画にもかかわらず、映画の中でほとんどこの病気について語られることがなかったわけですが、おそらく、障害を持った主人公を人間として平等に扱うためのはからいなのでしょう。だから、僕の生半可な知識を振り回すのもどうかと思うので、この病気の知識に関しては僕が興味を持った上の文だけにとどまらせていただきます。

タイトルについて
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by chuoeiken | 2005-09-17 00:37 | ヒューマンドラマ



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