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遥かなる山の呼び声(監督山田洋次、1980)
 
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 メロドラマかもしれない、人情ドラマに過ぎないかもしれない。だが、山田洋次の「遥かなる山の呼び声」は傑作である。出演は高倉健、倍賞千恵子、吉岡秀隆。彼らの魅力を存分に発揮し、その「くさい」ドラマに説得力を与えている。ハッピー・エンドが陳腐に思えるのは、登場人物の心の深遠や、人と人が触れ合う温もりをしっかり描けていないからである。
 北の国というシチュエーションが、無駄なものを省かせ、本質的な事を見つめさせるのだろうか。この映画は、物語はシンプルでテーマは極めて本質的である。すなわち山田洋次がどの作品でも一貫して描いているテーマ、「幸せとは何か?」という問いかけがよりストレートに伝わってくるのである。男と女が心に抱えている闇を語ったとき、それすらも互いに受け入れたとき2人は「夫婦」になったのだ。よくある話に思われる。だが、この作品がほかのそれと違うのは脚本であり、役者であり、場面設定が素晴らしい点である。
 今の日本映画が失ったものが、この作品にはある。最近の映画は、なんでも「汗」をかかないものが多い。登場人物に「生活感」がないのである。生きているという事は、もっと生々しい事のはずである。それは極めて本質的なことである。「汗」かく映画は、現代人にも響くはずなのである。「生活感」がある映画にこそ、本当にしみじみとした「感動」がるのである。
                  三橋 慶太
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by chuoeiken | 2005-10-31 16:31 | ラブストーリー
もののけ姫はこうして生まれた。
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 もの凄いエネルギーを感じる。映画(アニメーション)を作るのは是ほどまでの膨大な作業が必要なのか、ということが実感できる「作品」である。その作業をこなすチームのリーダーである宮崎駿が、どれだけパワフルな男かが伝わってくるのである。
 もののけ姫の製作当初から公開までを追う。すなわち、今やブランド化した「スタジオジブリ」という製作会社の実態に迫るのである。インタビューでは決して伝わらない「気迫」がスタジオ内に満ちている。宮崎はアニメーターから上がってくる作画に、殆ど納得しない。全て自分で手をいれ、徹底的に直していく。時には上がってきた作画を全て捨ててしまうことすらある。しかし、宮崎の仕事はそれだけではない。同時並行で作品の設計図である絵コンテを描いていくのである。今や国民的娯楽になった作品群は、一人の巨大なエネルギーの塊の下で作られているのだと再認識させられる。
 鈴木敏夫もやはりただものではない。宮崎駿にあれだけ率直に意見をいえるのは、この男だけである。電通や東宝の社員の前で、ジャージで胡坐をかいて宣伝会議をする。作品に関わる場所であればどこにでも顔を出している。鈴木敏夫の表顔でないときに表れる独特の雰囲気が、画面を通して伝わってくる。鈴木もまた、宮崎駿と同様にエネルギーの塊なのである。
 この男達の仕事ぶりを見ると、何か奮い立ってくるものがある。宮崎駿が表舞台(マスコミ)に姿を現さなくなった今となっては、貴重なドキュメンタリーである。
                  三橋 慶太
 
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by chuoeiken | 2005-10-31 16:27 | ドキュメンタリー
ベルリン、僕らの革命
b0040244_21175159.jpg 今の世の中に果たして共産主義は通用するのか?という生真面目な問題提起がこの映画の基調。共産主義、なんて言葉が飛び交うあたりドイツ映画だな~と思ってしまうけど、この映画は頭でっかちな左翼映画ではなく、良識的な作りだった。
 この映画を引き締めているのは、誘拐される富豪の存在だ。望まれない資本家である彼の存在が、ともすれば暴走がちになりそうなこの映画のテーマにうまくブレーキをかけている。その反面、そんなのお構いなしに主役のエデュケーターズたちにもっと徹底的に突っ走ってもらいたかったという思いもある。
 贅沢は敵だ、と叫び続けるエデュケーターズたち。しかし彼らはいつも嗜好品のハッパを手放さなかったのが気になった。それは贅沢じゃないのか?それを手にしている時点で君たちは資本主義の恩恵にまたがっていることになるんじゃないのか?
 もっと徹底的に突っ走らないと。ハッパなんか捨てろ。車を捨てろ。服を捨てろ。文明を捨てろ。世界中に呼びかけろ。それが本当の共産主義じゃないのか?
 この映画でいいのは、後半、成り行き上みんなで人里離れてキャンプする展開だ。自然が本当に美しい。金なんかに振り回されずに、自然と一緒に過ごせたらどんなにいいか。服も着ないでみんなして生まれたままの姿で過ごせたら、どんなにいいか。でも、お金でいい思いをして、キャンプに行ってもやっぱりハッパは手放さないのが人間なんだから、しょうがない。文明を自ら壊すことなど出来ないのだ。あなたは明日から文字通り素っ裸で過ごす自信がありますか?
 かといって、共産主義は間違ったことを言っては、まあいないとは思う。みんなが平等に過ごせたら、なんてすばらしい考え方じゃないか。人間の格差を許しちゃう資本主義がまかり通っちゃうなんておかしなもんだ。世の中の悪いことは全部金が原因で起こっている。金さえなければ、何も起こりゃしないのに。

 結局、金のある世の中に正しい考え方なんて存在しないのだ(言っちゃったよ…)。頼れるのは、自分の信念のみ。
                            鈴木
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by chuoeiken | 2005-10-30 22:12 | 青春映画
 シンデレラマン(監督ロン・ハワード、米、05年公開)
 
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 ハリウッドの王道を往く傑作である。近年、これ程までに主人公に感情移入できる米映画は皆無である。ロン・ハワード監督作品(『アポロ13』、『身代金』、『ビューティフルマインド』など)の中でも、最高の出来であると言っていいであろう。その最大の要因は、主人公ジム・ブラドッグの人物像にあると言える。
 時代背景が、ブラドッグの人物像を浮き彫りにする。すなわち、1929年に起きた世界大恐慌である。ボクサーであるブラドッグも、休みなく試合をしなくては家族5人が生活出来ない状況に追い込まれるのである。さらに、連戦がたたった怪我をし、観客を喜ばせる試合が出来なくなってしまう。それが原因で、ついにはボクサーの免許まで剥奪されてしまうのである。いわゆる、「リストラ」である。バブル崩壊を経験した日本人であるならば、誰でもブラドッグに感情移入してしまう筈である。
 そんなブラドッグが他の何よりも大切にしているのは、家族である。最近の米映画では、「敵」から家族を守るという映画は腐るほどある。しかし、貧困から家族を守る映画は、少なくとも近年のハリウッド映画では、『シンデレラマン』だけである。この作品が感動的なのは貧困に直面することによって、人間の本質が露わになるからである。すなわち、ブラドッグが家族を想う気持ちが真に伝わってくるのである(ボクシングの試合などから)。
 『シンデレラマン』は監督、脚本、役者と三拍子揃っている。今年度の米アカデミー賞の主要部門の大半を獲得してもおかしくない見事な作品である。
                        三橋 慶太
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by chuoeiken | 2005-10-26 18:31 | ヒューマンドラマ
霧につつまれたハリネズミ(監督ユーリ・ノルシュテイン、ロシア、1975年)
 
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 とても美しいアニメーションである。10分足らずの作品ながら、他の追随を許さない圧倒的な雰囲気が流れている。
 主人公であるハリネズミが、コグマの家にたどり着くまでを描いた作品である。こう聞くとよくありそうな単純な物語に聞こえるが、そうではない。ハリネズミが一歩、歩くたびに様々な出来事がおこるのである。不安なこと、楽しいこと、寂しいことなど、人が人生で遭遇しなければならない様々な出来事に遭遇していくのである。その全てのシーンが、本当に美しいのである。
 観終わった後、感動的な詩を読み終わった後の様な心地いい感覚が残る。そして、この映像は素朴にたまたま出来たものではなく、気の遠くなるような作業の結果であることに気づく。世の中で、人が創った人に感動を与えるあらゆるものは、その背後に製作者の恐ろしい程の努力が隠されているのである。
 『霧につつまれたハリネズミ』の監督であるユーリ・ノルシュテインは、世界で最も尊敬されているアニメーション作家である。この作品を観れば、多くの人がその事実に納得せざるを得ないであろう。
                        三橋 慶太          
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by chuoeiken | 2005-10-26 18:17 | アニメーション
ウェスタン(監督セルジオ・レオーネ、米=伊,1969年)
 
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 稀代の西部劇である。ストーリー、役者、美術、音楽、構図、全てが完璧と言っていい位の出来なのである。この映画を観た人は、ファーストシーンから、エンドクレジットまで「映画」を堪能できること請負である。
 何より凄いのは、約40年前の作品にも関わらず「古臭さ」を感じさせない事である。画面の隅々(または画面に映らない箇所)まで作り込まれた美術が要因のひとつであると考えられる。近年、日本でもアメリカでも「時代劇」が大量に作られてきたが、ここまで見事な美術は見たことがない。役者も全員が「西部劇」の「顔」をしているのである。男は誰もが薄汚れた顔をしている。着ている服からすら、男達が生きてきた人生を感じさせる位である。本物の映画を作るには、これ位作りこんだ美術が必要なのである。
 ストーリーも、単純な勧善懲悪でないところが良い。なぜ、主人公の男(チャールズ・ブロンソン)はフランク(ヘンリー・フォンダ)に恨みを持っているのか。その疑問はラストまで明かされない。登場人物のキャラクターが独特で、行動が予測できないところが面白いのである。登場人物の個性と、徐々に謎が明らかにされていくサスペンスタッチ(全くサスペンスではないが)のストーリーがマッチして見事な味わいを醸し出しているのだ。その物語をエンリオ・モリコーネの哀愁に満ちた音楽が、さらに盛り上げている。
 セルジオ・レオーネの傑作は数々あるが(『夕陽のガンマン』、『ワンス・アップ・オン・タイムス・イン・アメリカ』など)、『ウェスタン』は最も完成度の高い傑作である。
                      三橋 慶太                           
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by chuoeiken | 2005-10-26 18:11 | 西部劇
イン・ディス・ワールド(監督マイケル・ウィンターボトム、英、02年)
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 観ている間、日本に住んでいる事の意味を再認識させられる。『イン・ディス・ワールド』はマイケル・ウィンターボトムという監督が、いかに「世界」に対して鋭い認識を持っているかを示した作品である。主人公は、本当に中東パキスタン難民キャンプからスカウトした少年である。その少年と、数人のスタッフは「本当に」国境を越える旅をし(パキスタンからイギリスへの越境)、この映画を作り上げたのである。
 全編において、主人公・ジャマール少年(実際の本名と同じ)が使える言語以外は字幕表示されない。つまり、観客は少年の視点で「世界」を冒険するわけである。世界のルールでは、自国の国民と客(ビザを持っている外国人)以外は、排除される事になっている。ジャマール少年の目を通す事によって、その事実が一体どういうことなのか、ということが痛いほど伝わってくるのである。つまり「国」がない「人」の気持ち、「国」を追われた「人」に気持ち、をほんの少しでも「認識」することが出来るのである。ほんの少しであっても『認識している』ということは重要なことである。
 いつ発見され送還されるか、ひょっとしたら死ぬかもしれない「旅」でありながら、様々な文化に触れる少年の新鮮な興奮が伝わってくる。この作品は、現代における本物の冒険映画である。
                        三橋 慶太
                                        
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by chuoeiken | 2005-10-26 18:06 | 社会派ドラマ
ミスティック・リバー
b0040244_0222496.jpg ティム・ロビンスをティム・ロビンスだと初めて意識して観た映画が「CODE46」の絶倫オヤジ役だったので、「宇宙戦争」やこの映画での汚れたオヤジ役が、僕にはとても新鮮に見える。彼の役の変身ぶりは、ジョニー・デップと並んでなかなか目を見張るものがあると思うのですが。

 それはともかく。予想していたものと反して、非常に精神的に難しい映画だった。ストーリー以外のところで観客に何かを訴えかけようとする、どこか邦画のような趣を感じた。
 そういう映画だから、見当違いのところも多々あるだろうが、僕は色々と感じるところの多い作品だった。しかしこの作品、僕は非常に気に入ったが、見た目以上に間口の狭い映画のような気がする。「今この時代だからこそ」映える映画であるという印象が強かった。

大出血ネタバレ
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by chuoeiken | 2005-10-26 02:58 | ミステリー
悪い奴ほどよく眠る(監督黒澤明、1960年公開)
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 衝撃的な映画である。ストーリーはもちろん面白い。しかし、なにより「政治」が「娯楽」になっている点が衝撃的だったのである。
 日本では政治映画はほとんど作られてこなかった。大島渚の「日本の夜と霧」と近年の佳作「金融腐食列島 呪縛」位であろうか。その背景にはメディアと政治がお互いに、深い介入を恐れたという点が挙げられる。「NHK問題」が世を賑わせたのが(今でも賑わっているが)、なによりの証拠であろう。つまり第3の権力であるメディアと政治は、近づきたいが、遠ざけたい関係なのである。それを、黒澤はギリギリのところでうまく描いているのだ。
 主人公は時代を担った(他の黒澤作品でもそうである様に)存在である。政治に圧制された過去があり、権力に復讐しようというのである。その対立関係を描くのが抜群にうまいのだ。またサスペンスタッチな演出により、誰が観ても面白いエンターテイメントに仕上がっている。そしてなにより、この物語の結末がこの作品を普遍的な映画にしているのである。
 恐ろしさと同時に、権力というものがいかに人間を変えるか認識できる映画である。それらは今の政治にも当てはまる、と感じ私は強い衝撃を覚えたのである。
                        三橋 慶太
                                                
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by chuoeiken | 2005-10-24 19:17 | 社会派ドラマ
CASSHERN
b0040244_22295368.jpg いかんせん長い。内容は決して悪くなかったのに。監督は、「長い!お前の話は長い!」と大滝秀治に怒られやしなかったのか。
 ストーリーは大体忘れてしまった。そもそも、ストーリーとしての全体のつながりが悪すぎてなかなか話に乗れないのだ。学生の、不慣れで歯切れの悪いゼミのプレゼンを見ているような気分になる(俺だよオレオレ!)。
 だがとにかく、手を抜いて作ってないのは好感が持てる。ただ、作り手の熱意が空回りしているのだ。全体的に力が入りすぎてて、観ている側はどこで息をつけばいいのかわからなくなる。その不器用さがこの映画の身上とも言えるかもしれない。しかし観る側としては、そんな不器用な熱意を観るためにわざわざ高い料金を払おうとはなかなか思わないからなぁ。う~む。

 一言で言ってしまうと、「全編クライマックス」という感じの映画。これはけなし言葉であり、ほめ言葉でもある。

ネタバレ、かも?
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by chuoeiken | 2005-10-23 23:59 | SF



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