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ダンサー・イン・ザ・ダーク
ダンサー・イン・ザ・ダーク_b0040244_18125456.jpg ビデオ屋で観たいものが決まらないときほど苦しいことはありません。特に今の自分の心境がわからないときなど、今自分はどういう映画を求めているのかわからなくなります。今俺は一体どういう気分なのだろう、そもそも俺は一体誰なんだろう、いやそもそも人間とはとか悩みだし、もはやビデオどころじゃなくなり、800度の高熱を出し寝込んでしまい、一週間に一度の半額デーを逃して一週間を棒に振ることが往々にしてあります。でも、僕の経験では、曖昧な気分のときは観ないほうがまだマシということが多かった気がします。無理に選ぶより、直感に任せたほうが結果的によかったりするのです。
 それはさておいて、僕は、この映画に対する評価をかなり多く聞いてきました。たとえば、「気持ち悪くなった」「変な涙が出た」「正月早々観るもんじゃない」「液漏れした電池のよう」等々の聞くだにすばらしい皆さんの声を耳にし、僕は、この映画についてはとっておきの時に観ようと決めていました。絶対、曖昧な気分の時には観ないようにしようと。精神的にちょっとヤバくなってた時だったんでしょう、考えるより前に手がこの映画に伸びていました。人間は心理的に同じ境遇にあるものを求めてしまうのだな、としみじみ思いました。このとき僕は、完全に直感任せでした。とにかく僕は、この映画にドン底まで叩き落されるのを望んでいたのです。



 それがなんということでしょう。この映画を観たら皆さんの感想にことごとく反して、ヘコむどころか元気をもらってしまったのです。僕は憤慨しました。これはまったく僕の意図するところではない!おそらく、僕が根っからの楽天家であるのか、よほど性根が腐っているのか、よほど精神的にどうかしていたのかでしょう。たぶん全部ですが。
 何が良かったって、とにかくミュージカルのシーンです。ストーリーは40点でミュージカル部分は160点。なんと、平均して100点です。こんなに心を揺さぶられたミュージカルは初めて観ました。僕の中ではミュージカル映画は受け付けなくて、楽しみにして観た「ファントム・オブ・パラダイス」も正直ムリでしたが、今作はミュージカル映画というわけでもなかろうに、遥かに感動したのです。
 「ミュージカルはおかしい。いきなり踊りだすなんて変だよ」という台詞を聞いたあたりから、僕はこの映画が好きになれそうな気がしました。だから、主人公は空想の中で精一杯踊ります。その空想が、みんな本当に楽しそうなのがたまらなくいい。僕がここで何かを言うより、ビョークが、水を得た魚のように、本当に気持ちよさそうに歌っている姿のほうがよほど雄弁です。その姿を見ているだけで、ああ、音楽はこうあるべきなんだと、つくづく思いました。
 いくら空想が楽しくたって、現実がどうなるわけでもありません。だからどうした、という話です。しかしこの映画は、現実が変わらないなら、自分の心が変わるしかないと言っています。僕は、主人公はそんなに不幸だとは思いませんでしたけどね。周りは悪い人ばかりじゃないし(むしろいい人のほうが多い)、常に自分で選んだ道を行ったわけだし、歌っているときに最期を迎えられたし。自分に正直になり、心から本当に自分が楽しめるものがあれば、何も怖くないんだということを教えられた気がします。

 だ か ら ど う し た …

 僕は今、皆さんが言った言葉の意味がようやくわかった気がします…結局この映画は、僕を現実から救おうとはしてくれませんでした。だからこそ僕は元気になれたのだと、思いました。
                            鈴木
by chuoeiken | 2005-09-15 18:23 | ヒューマンドラマ
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