![]() その中で何がいいって、断然マーヴ編だ。枯葉みたいなミッキー・ロークのしゃがれ声がバックになっているだけで極端に単純化された白黒世界がサマになる。到底、こんなムチャクチャでカッコいいキャラクターは、何もかもがやりすぎな無法映画でなければ描ききれまい。これだけでも、この映画を観てよかった、と思える。 しかも、ただカッコいいだけではない。 情けない。この映画に出てくる男たちは、なんとも情けない。 ハーティガンは、心臓に爆弾を抱えろくに体が動かない。しかも父と子ほどの年の差のある少女からの手紙に助けられ、惨めなムショ生活をかろうじて生き抜いている。ドワイトは、女たちが支配する町の中で男としての立場をなくし、思ってもみなかった運命に翻弄される。マーヴだって、死んだと思っていた女が突然目の前に現れたときの、なんと不甲斐ない彼の姿!すっかり魂を抜かれ、車にゴムまりのように何度もはじかれる。 僕には、男たちのこういう情けなさばかりが頭に残った。だってしょうがないじゃない。3つのエピソードには、どれもこれも主役の男たちの心の声がバックになっているんだもの。自らの惨めな状況の中でなんとか自分を奮い立たせようとしている声が。しかもこれがまた、単なる愚痴にしか聞こえない。ちっともスマートじゃない。何とかカッコつけようとしているようにしか見えない。 男の情けなさは他にも現れている。二度も「男の下の武器」を奪われるジュニア。男としてのシンボルを失い、体は醜く変化してしまった。そして、女の肉を食べることでしか自分の欲求を満たせないケビン。さらにオスカー俳優デル・トロが魅せる、一世一代の情けない男筆頭、ジャッキー・ボーイ。あの未練がましい不死身っぷりがたまらない。しまいには、女たちが支配する町そのものまで現れる。この映画に徹底して貫かれている、男どもの不甲斐なさは一体なんだ? ![]() しかし、わからない。男たちには、女の気持ちが到底見えない。なぜこんなに醜い自分のことをゴールディは愛してくれたのか?なぜあんなに純粋だったナンシーがストリッパーになってしまったのか?なぜ好きだと言っておきながら、オールド・タウンの女は自分のことを裏切ろうとしたのか? シン・シティに来れば、何でも見つかるはずじゃなかったのか? しかし、人の罪、つまり人の本性が現れる町でなら、何でも見つかるというのは本当かもしれない。見つかるもの、たとえば、女の本当の心は決して見つからないという男の悟りであるとか。 鈴木
by chuoeiken
| 2005-10-13 00:34
| アクション
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