「生きている」という事は孤独である。普段、多くの人はそのことを感じない。しかし、大切な存在を失ったとき本当の孤独に直面するのである。『アバウト・シュミット』は、その「孤独」と真正面から向かい合った映画である。 主人公は生命保険会社を定年まで勤めたシュミット氏(ジャック・ニコルソン)である。ある日、最愛の妻を失い平穏に思われた生活の歯車が狂いだす。シュミットとという人間の本質が、「1人」になる事であぶりだされてくるのだ。その描きかたが、あまりにリアルで皮肉たっぷりな為に、笑わないで観ることはほとんど不可能に近い。しかし、シュミット氏をそれだけリアリィティを持って描けるのも、ジャック・ニコルソンという怪優の存在があってこそである。誰にでも思い当たる節のある生活のディティールを、見事に演じきっているのである。その名演によって、シュミットという酷く情けない男に、情けない男だからこそ感情移入してしまうのである。 誰もが孤独を抱えて生きている事を教えてくれる映画である。しかしこの作品を傑作にしたのは、ほんの少しであっても誰かと気持ちが繋がっている事の喜びが、ひしひしと伝わってくるからである。 三橋慶太
by chuoeiken
| 2005-11-08 13:08
| ヒューマンドラマ
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