この映画にはセリフが殆ど使われていない。多くの作品とは比べようもない位、豊かな登場人物の個性を「絵」だけで表現しているのである。『ベルヴィル・ランデブー』は、昨今のセリフによる説明型映画のアンチテーゼともいうべき作品なのである。 主人公は、老婆である。両親不在(何故不在かを観客に想像させようとしている)の家で、孫と生活している。何も喋らない孫に、老婆は孫を観察し好きなことを発見しようとする。実写で描いたら暗くなってしまいそうな物語を、個性的な絵で淡々と特異なキャラクターを描いている為、明るい「面白さ」があるのである。アニメーションとはかくあるべきか、と思わせる秀逸な演出が光っている。特筆すべきは、セリフを徹底的に省いたことである。その演出により、登場人物の「動作」が強調されているのである。各登場人物の行動は突飛ではあるが、動作にはリアリティがある。そのギャップが、この作品をずばぬけて面白くしているのである。 本来、映画の面白さは「動き」の面白さに比重を置き、ストーリーやセリフを観客に想像させる点であった(トーキー映画時代までは)。ところが映画に音が入るようになってから、登場人物の「言葉」に多くを頼りながら物語を作るようになってしまったのである。この作品は「動き」の面白さを存分に取り入ている。もちろんそれだけではなく、ストーリーも秀逸でありセリフ以外の「音」の完成度も高い。ここまでのレベルに達した作品を、面白くないと言う人がいるのだろうか。 三橋 慶太
by chuoeiken
| 2005-11-08 13:28
| アニメーション
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