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コンスタンティン
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 簡単にまとめちゃうと、ヘビースモーカー役のキアヌ・リーブスが銃でタバコの箱を吹き飛ばすと、画面いっぱいにドドーンと「喫煙はガンや心臓病の原因となります」のメッセージが映し出される。「コンスタンティン」はそういう映画。えぇー?
 いい意味で変な映画だった。この映画が独自の世界をつくってくれたおかげで、観ている間キアヌが「マトリックス」のイメージと重なることはほとんどなかった。
 ただ、いまひとつこの映画のノリについていけなかった。ギャグなのかシリアスなのかいまいちわからなかったのだ。
 それにしても、ここまでタバコの描写やラブシーンの排除にこだわる映画は観たことがない。思わず笑ってしまう。だからこれはギャグ映画だと捉えて観るのが正しい。たぶん。





 誰の心の中にも、悪魔は存在する。
 いくら死ぬと言われても、タバコや酒は止められない。恐るべし、人間の欲望。この映画のあまりに執拗なタバコの描写を観ていると、タバコや酒をやっているとき、人間は悪魔に取り付かれているのだろうか、とまで思えてくる。
 天使や悪魔は、人間界から切り離された存在ではなく、あくまで人間の中に備わっているイメージの現われだ。僕はというと、普段は気弱だが、酒を飲むと気が強くなるタチで、いつも心の中に溜め込んで言えなかったことを吐き出したいときは、とにかく酒の力に頼る。その時僕は、間違いなく自分の中の悪魔に魂を売っている。きわめて日常的なことだ。
 しかしこの映画では、天使も悪魔も変わらない。どちらにも同じく生殺与奪の能力が備えられている。それどころか、天使のほうが悪魔を人間界に解き放とうとし、悪魔のほうがそれを阻止してしまっている。さらに、悪魔はコンスタンティンの命まで救っている。悪魔に救われてしまうとは、善悪の中立も何もあったもんじゃない。この映画に言わせれば、天使は存在しない。誰もが悪魔だ。そして人間は悪魔に救われてしまう。その辺の皮肉ぶりがとてもおかしかった。
 サタンがコンスタンティンに「生きろ」とささやく構図は強烈にアンバランスだ。皮肉だとしても、悪魔がそんなこと言っちゃう?そういえばガブリエルの目的も、直接的な人間の滅亡ではなく、恐怖に耐えて生き延び、悪魔に打ち勝てという人間への挑戦だった。そうすれば神の恩恵を受ける資格があるというのだ。
 つまり、両者とも人間の存在を否定するようなことはしていない。生かしておいて、いつ人間がハメを外すかをじっと見守っているのだ。

コンスタンティン_b0040244_22411529.jpg この映画の、「人間は悪いことしなきゃ生きていけない」な達観した哲学がすさまじい。天使よりも悪魔のほうが魅力的に見えてしまうのは、きわめて自然なことだ。もし、サタンに肺からタールを取ってもらった後にコンスタンティンがした呼吸がとてもおいしそうに見えてしまったらご用心。あなたは間違いなく悪魔に取りつかれていますよ。
 もし神様や悪魔がいるとしたら、よほどのヒマ人か、よほど人間が好きな人なのだろう。そうでなければ、人間なんかとっくに滅ぼされている。ガブリエルが堕天使にされてしまったように、神は人間の命をみだりに扱う者には手厳しい。
 だから、神様にしてみれば、人間にはタバコを吸ってほしくないのだろう。そんなものやって命を縮めるぐらいなら、もっと健康に生き延びて、私を楽しませてくれという心境なんだろう。でもお言葉ですが、自分の身を汚してこそ「生きる」ということだと思いますけどね。(←天罰必至)
                            鈴木
by chuoeiken | 2005-11-13 16:18 | ホラー
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by chuoeiken