マイノリティ・リポート
b0040244_2113064.jpg 前に一度観ていましたが、この前テレビでやっていたのでまた見たら、これが最初に観たときよりも面白かった。最近、お金を出してレンタルで映画を観るよりもテレビで観たほうが面白いという妙な病気に罹っていて我ながら情けないのですが、おそらくそれは、全国で同じ時間にみんながテレビの前にいるという集団心理が作用しているせいだと少なくとも僕はそう思っています。
 この映画を観て、改めて僕はスピルバーグは映画の天才だと思いました。つまり、彼が映像で語る以上の含意を感じさせてくれるということです。言わせてもらうと、スピルバーグはストーリーを考えながら映画を撮ることなんかない気がするのです。スピルバーグが、こんな小難しいストーリーの意味を考えながらこの映画を撮ったとはとても思えない。いかに映像を美しく撮るかだけを考えている。そこが彼の天才たるゆえんではないか。少なくとも僕は、この映画のストーリーのからくりはおおかた忘れてしまいました。
 スピルバーグは、ストーリーよりも映像に説得力を持たせる人です。そういう視点から見ればこの映画はスピルバーグにまったく不向きと思うし、傑作とは言いがたいのですが、それに対し映像の力は相変わらず圧倒的で説得力があり、また彼お得意の含蓄あふれる悪趣味なジョークが冴え渡り、いささか疑問の残るストーリー面を十分補える仕上がりだと思います。
 説得力ある映像と簡単に言っていますが…それが一体どういうものなのかを示すのはとても難しい…何しろ、映像が面と向かってこちらに言葉を語りかけてくるのです。それは、スピルバーグのキャリアがなせる業としか言いようがない。
 説得力ある映像という意味では、キューブリックと同じ趣を感じます。ただ「A.I.」や他のスピルバーグ映画がそうであるように、彼の映画はおセンチでヒューマニズムが強くてキューブリックのような巨匠になりきれていない。そこがまた彼の魅力なのですが。

 そういうわけで、僕がこの映画からいかにさまざまなものを感じ取ったか列挙したいと思います。この先は文章というかメモのようなもので、箇条書きではなはだ見苦しい文面でかつ存分にネタをばらしているのでどうか真剣に読まないでください。
 この中には多分に僕の思い込みが含まれているわけですが、とにかく僕が言いたいのは、シーンの隅々まで映画を探って楽しみたければ、スピルバーグの映画ほど面白いものはないということです。




 この映画で偏執的なまでに強調される不快な「目」の描写は一体何を表しているのか。例えば…
・映画開始早々、ハサミで写真の目をくりぬく。
・「盲人の国では片目でも見えればキングだ」
・モグリの眼医者。「お前に目がなくて…」「目が開いた」「お前のおかげで開眼した」
・転がる自分の目を追いかけるトム・クルーズ(結局片目を落とす)。
・オルガンの上に置かれて不気味な音を奏でるトム・クルーズの目玉。
・網膜スキャンに管理される社会。

 高度に発達し管理された未来社会の描写は行き過ぎではないか。例えば…
・倫理を無視したプリコグシステム。
・個人に語りかけてくる不気味なCM(ジョン・アンダートン、あなたは寂しい道を?)。
・突然放たれたスパイダーにセックスや夫婦喧嘩を中断されながらも素直に従う住民。
・自由の利かないジェットパックをしょった警察が民家に乱入(ジェットパックが役に立ったことといえば、ハンバーグをこんがり焼くことぐらいだ)。

 他にも…
・華麗にモニターを操るトム・クルーズの姿がさながら指揮者のように見えたのはなぜか。
・冒頭、住宅地に立ち並ぶ個体の識別の付かない家々は、行過ぎた情報化で個性の剥奪された社会の象徴なのか。
・出来立てホカホカの赤いレクサス(血のよう)から出てくるトム・クルーズの姿は何を表しているのか。
・腐ったサンドイッチと牛乳のシーンはわざとらしすぎないか。
・サマンサ・モートンの霊的な目は何を映すのか。そして彼女のぶっとい首には何が詰まっているのか。
・嘔吐棒とは何なのか。
・ヤカモト様とは何なのか。
・あの先もヤカモト様として生きていかなければならないトム・クルーズは一体何なのか。


 本当はもう100個ぐらいあるんですが、だんだんむなしくなってきたのでこの辺で止めます。こんなバカなこと書いてるやつも極めてマイノリティで、この映画の中なら即削除されてしかるべきものだと思いますが、少数報告が保障された社会でほんとによかった。結論を言えば、これらはすべて僕の無意味な勘ぐりでしかないんですが、こうやって見ると、スピルバーグの映画ってなんて面白いんだろうと改めて思います。どんなに無理矢理な解釈をしてもそこに何かしらの物語や真理が生まれる気がする…それはまさに、スピルバーグが映画の天才に他ならないからなのです。
 最後に。ここまで付き合っていただいてありがとうございました。一度はこういうことを書いてみたかったのです。満足です。ただもう二度とやりません。
                            鈴木
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by chuoeiken | 2006-03-05 00:29 | SF
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