まあぼくが岩井俊二好きというのは、内輪では結構有名な話である。「リリイ・シュシュのすべて」だとか「スワロウテイル」も好きだが、あの人の徹底した美的(なだけの)映像の追求というのは、ストーリーを固めた作品よりも短編、特に「あまり出来事が起こらない話」でこそ活きるところがあるように見える。その点で「PiCniC」もすごく好きであり、あちらの方が完成度が高いとは思うが、ここで「undo」を挙げるのは単に山口智子が好きというだけの理由。 山口演じる「強迫性緊縛症候群」、つまり何でもかんでも(物理的に)縛り付けてしまう病にかかった妻と、彼女と結びついている実感が持てない夫。その生活の中で心を縛り解くという事と、体を縛り解くという事の倒錯が始まる、というストーリー。ちょっと勝手な解釈が混ざってますけど。 愛の虚しさとか他者とのコミュニケーションを描いたものに見えるのだけれど、山口智子を縄で修飾した映画、という側面が強く見られてしょうがない。様々なトレンディ・ドラマに於いて現代社会を気丈に生きる女性を演じていたのに、こんな 夫をトヨエツが演じ、精神科医を田口トモロヲが演じるという豪華キャストであるが、中盤辺りからもう山口しか見えない。むしろ心理描写においては夫の側が重視されており、妻の存在が付随しているとも見られるが、ああいう技法で表現されてしまうと彼女を見てしまう。 多分この映画を見た感想というのは、自分が持つ恋愛の価値観が顕れたものになると思います。ぼくは二人の人間がいて愛情でもって『結びつく』なんていう行為は結局、「満足」と「拘束」というキーワードだけで説明がつくと考えています。 錯覚だ錯覚、愛情なんていうものは。錯覚してなければ、時間的・物理的拘束を受けて満足した気分になんてならないだろ、普通!でもその錯覚が無ければ人間は生きていけない。 だから山口の劇中での台詞は胸を打つのです。「ちゃんと縛ってよ」。 あるO
by chuoeiken
| 2006-11-07 10:24
| ヒューマンドラマ
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